源氏物語 相国寺承天閣美術館編
山口伊太郎氏の源氏物語錦織絵巻が相国寺承天閣美術館で展示されていた。
実は、午前中の石山寺から一度ホテルの戻り荷物を持って雨の京都駅へ。
荷物を預け、妹がどうしても京都の寺を見たいと言うので女房が園通寺へ行こうとタクシーに乗った。 しかし、園通寺は比叡山の借景が有っての庭であるのに今日は見えないから価値は半分以下。
で、結局妹が昨日行きたかった相国寺へ急遽変更。
相国寺の横に承天閣美術館があり、そこで故山口伊太郎氏の源氏物語絵巻が展示されていたのである。
出来上がったばかりの四巻現物で非常に色鮮やかに出来上がっている。
私が特に注目したのは「鈴虫」の、公達が笛を吹くその欄干に黒の菱文の“うすぎぬ”が掛けてある。 その“うすぎぬ”が凄い織り方をしているのです。
風通織(ふうつうおり)と言うそうです。
良く観察しました。
下に配置された黒の経糸を引き上げ、黒の横糸でウスギヌを浮かして織っているようです。
そしてそのウスギヌの下には織られた欄干が透けて見えます。
二重織というか袋織の方法でしょうね。 自分で一度試織してみたいと思いました。不鮮明な絵ですが私が言っている所を図示しました。
作者の山口伊太郎さんは明治37年(1904年)生まれで、70歳の時に隆能源氏の絵巻を錦織で制作する事に挑戦し、昨年、完成目前に105歳で亡くなり、弟さんが引き継いで完成させた物です。
第一巻と二巻はルーブルの東洋美術専門のギメ美術館にすでに寄贈されたそうです。
基本的にギメは作者生存の作品は収蔵しないが例外的な取り扱い。
西陣は昔、リヨンからジャガード織機を導入して更に発展したが、そのフランスから芸術文化勲章をもらっています。
さて、毎度の事であるが日本での評価はどうなるの? この錦織の為に山口氏がそれまでの全人生で体得した織技術、その周辺技術、を駆使し更に錦織絵巻製織中に新たに開発した技術、技法、更に源氏絵巻を超越した織柄の迫力、を、そしてその美術性を適切に評価出来る人がいるのだろうか?
少なくともフランスには、居たのです。
6-7年前に仕事でリヨンに立ち寄った時に織物博物館を見学したが、リヨンでも織物は衰退しているが昔の織機や織物が丁寧に保管展示されていましたね。
一度、皆さんも是非、山口さんの精神がこもった源氏錦織の素晴らしさを御覧の程を!
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Comments
shimaさん、おはようございます。
源氏物語を30年以上かけて織物で表現・・・なんと壮大なことでしょう。考えただけでも気が遠くなりそうです。
二重織りの欄干も見てみたいですし、
京都に行ったら 源氏錦織 是非拝見したいです。
Posted by: zucca | June 09, 2008 09:45 AM
zuccaさん
是非一度ご覧ください。
この美術館では7月6日までですが必ず何処かで
展示すると思います。
多分、山口さん以外で最早このような錦織絵巻は出来ないと思います。
やがて国宝となるべき物と思います。
Posted by: shima | June 10, 2008 09:29 PM
円通寺は数年前の秋にお邪魔しました。
晴れていて、紅葉が始まっていて
もちろん比叡のお山も見えて
サイコウに素敵でしたよ
比叡が見えないなんて、残念でしたねぇ~~
山口氏のことは、テレビで見た記憶があります。
実際の作品 いつ拝見できることやら、、、
にしても、ギメ
先だって、ギメから一時里帰りしていた
浮世絵を沢山見ましたが素晴しかったです。
ギメに行きたーーい!!!
Posted by: なを | June 11, 2008 07:55 AM
なをさん
7-8年前に円通寺で比叡山を背景にした庭を堪能しました。 いい場所にありますね。
4月にパリへ行った時、ルーブルへ立ち寄るのが一つの目標でした。 所がですね、出かけて見ると雰囲気がおかしい。 なんと、当日は休館日だったのです。
火曜日でした。 日本の常識では有りませんね。
山口氏のことは以前NHKでも紹介していたようです。
機会有れば是非ご覧ください。
Posted by: shima | June 11, 2008 08:29 AM
shima様。源氏物語錦織絵巻はぜひ鑑賞したい
と願っていました。やはり山口師の生涯かけての
錦織の技、素晴らしい大作品ですね
源氏物語を表現の錦として後世に残る偉業です。
Posted by: nekozizo | June 21, 2008 10:02 AM
nekozizoさん
これは国宝にすべき作品と
思います。
それほど沢山の織の技術と知識がつまった
錦織だと思います。
Posted by: shima | June 24, 2008 06:01 PM