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January 05, 2006

“隣の2+2”

昨年のコラム欄8月17日付けで事実にもとづいたエッセイ「隣の二人」を掲載しました。これは、それの続編ですが全くのフィクションです。 

“隣の二人プラス二人の独り言”

小林:

俺はちゃんと茶山が言うたようにしたんや。

茶山が言うたように、コップ酒も倒した。

言われた通り店から客も連れ出した。

俺は茶山が言った通りにやる事をやったんやが、茶山は怒っている。

どうしたと言うのだろう?

茶山:

小林の、どあほ。酔っ払いよって。コップ酒の倒すタイミングを間違いやがった。

俺がせっかくお膳立てしたのに、ぶっ壊しちまった。アイツは頭がおかしいよ。 

まったく、もう。

俺が店に戻って来るまでに客を外へ連れ出せと言うたのに、戸口でウロウロしやがって。

ママ:

あの二人は何かおかしかったなー。

あんなチョットの酒で酔っ払う訳が無いよ。

それにあの目付き、ほんま、目は笑ってなかったわ。 

“ママは美人だ”なんて昔はしょっちゅう言われていたよ。

拘置所を出てきよったって? 人殺しでも、しよったのかねー。

小林:

ほんでも、あの客は親切だったなー。

お陰でうっかり刺青の傷を見せる所やった。

それにしても茶山のやつ、失敗しよったから金は払えんなんて。

俺は客を連れ出した。 もっとも客が俺の肩を支えてくれたんやが、ちゃんと連れ出した。

だから俺はやる事はやったんや。

茶山:

せっかく拘置所で仕入れた情報を無駄にしちまったなー。

あの客は山から降りてきたと言うてたが、あのママとえらい仲良く見えたな。

ほんまなら、俺が勘定した時点でママは店を閉めると言ったんやから、あの客も当然勘定すべきで、また、ママもあの客に支払い要求すべきやないか。

ママとあの客は以前から仲ええのかなー。 全く、あの客め、邪魔しよって。

ママ:

あの客はええ人や。 わても若ければもう少し話したかったなー。

でも、あの人はええ人やが、色々経験深い人やな。 今までぎょうさんの男達を見て来た経験から、あの客は親切だけではない所も持っているやろが、その辺は顔に出しよらへん。 まー、あのまま帰らして良かったんや。

小林:

悲しいな。 俺の脚はムショの独房暮らしで萎えてしまい、旨く動かなくなってしもた。

だから嫌でもあの茶山と一緒に居らんと暮らしていけへん。

茶山の言う通りに俺はちゃんと、ママが一人の時間を作ったんや。

茶山:

確かに小林はママが一人の時間を作りよったが、その時、小林は何処にいた?

俺は隠れて、ママや客に気づかれんよう、ずーっと外から監視していたんや。

俺がムショで仕入れた情報はあのママは絶えず現金を持ち運んで居ると言う事じゃ。

でもなー、いかに年とったママとは言え俺一人では無理だ。 あのママの気性ではすぐに大声を上げはる。 俺の体も旨く動けねーから二人合わせて一人前よ。

小林がコップ酒を倒した時に、ママはカウンターの酒を拭きに俺ら二人の間に入る。 俺がこのガムテープでママの口を塞ぐ。 その間、小林はママの手を後ろに回してネジっておれば、後はこちらの物よ。 グルグル縛って、持ち物しらべ全部の現金を盗ったら、おさらばよ。 その積もりだったんだ。

ママ:

あのお客、又、来てくれんかいなー。

お客:

俺は小林を柵に残し、茶山が来るのを待たずに、帰ってしまった。

結局俺はあの二人に何をしたのだろうか。中途半端で助けてやれなかったんだ。

逆に俺は余計な節介であの二人の仲を邪魔したんやろなー。

やれやれ。俺のやる親切ってこんなもんや。

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